それから少しだけ咲子と会話をして自分の席に座った。


パイプ椅子はなんだか頼りなくて、座った瞬間ギュッと悲鳴をあげた。


あたしの苗字は日下部だから、咲子とは離れてしまった。


ひとりで開会式を待つのは嫌だなぁと思いつつ、周囲の会話に耳を傾ける。


もし自分も知っている内容なら、少しくらい会話に混ぜてもらえるかもしれない。


「このクラス、カッコイイ人いるかなぁ?」


「どうかな? C組にカッコイイって有名な人の名前があったよ」


「そうなんだ!?」


「やっぱり中学になったら彼氏くらい作らなきゃだよねぇ」


女の子たちの楽しそうな話声に、あたしはうつむいた。


女の子たちの関心はもっぱら新しい恋にあるようだ。


どうやらあたしは話題に入ることはできないみたいだ。


あたしには無縁の恋。


あたしにはできない恋。


だってあたしは……恋をすると死んでしまう病気だから。