それを見ていて咲子が関心したため息を吐き出した。


「さすが王子様だね」


「王子様?」


「うん。さっきトイレに行ったときに女子たちがそう言ってた」


王子様……。


同じクラスになってからまだ2日目なのに、あたしは3度も船見くんに助けられている。


初日の委員会決めのとき。


階段でプリントを落としたとき。


そして今もだ。


咲子の言うとおりピンチの時には必ず船見くんが助けてくれた。


きっとみんなにも同じように優しいから、王子様と呼ばれているんだろう。


そう思うと少しだけ胸の奥が痛んだ。


今あたし、みんなに嫉妬してる……。


そう気がついて強く左右に首を振った。


恋できないあたしがみんなに嫉妬するなんてありえない。


船見くんだって、きっといい迷惑に違いない。


それにあたしは恋愛なんてしなくても、沢山の本がある。


本を読めばどんな経験でもすることができるし、どんな場所にも、時代にも行くことができる。


それで十分だ。


あたしは自分自身にそう言い聞かせたのだった。