燐が家に戻り、電気が点くのを確認して千治はバイクのエンジンをかけた。 ヘルメットを被る。 スマホを見た。今日のバイト先は、海沿いのモーテル跡地。一昨年廃業して取り壊されずにそのまま残っている。 廃墟と化したそこですることなんて限られている。 昼間の燐の喧嘩を思い出し、血が沸く気がした。いや、踊る気が。 来た道を戻りながら、バイクを吹かした。 「顔、そんなになる前に落とせよ」 「初戦で勝ったなら充分でしょ、燐ちゃん喧嘩したことないんだから」 子供の教育方針を巡って対峙する夫婦の様だ。