学校にいた、はずだ。
燐は最後の記憶を辿る。そうだ、学校へ辞めに行こうと思って、クラスメートと喧嘩をして。

目元を拭うついでに鼻に触れると激痛が走る。

「ああ……いや、明日は行く」

少し開いていた扉が大きく開かれ、高身長で私服姿の男が入ってきた。グレーのパーカー。

ふと燐を見る。手にはスマホ。
誰かと通話をしていた。

静かに動き、男は燐に近付いた。ソファーの傍に座り、燐の顔を覗き込む。

手を伸ばされ、顎から順に触れられる。寝起きなのもあり、燐はされるがままになっていた。