この満身創痍な身体で、千治を振り切って逃げられるとは思わない。大きな声を出して助けを求めるか? 誰が来てくれるだろうか?

どこまでも、本当に、永遠にひとりだ。

この学校という箱の中では。

燐はぼんやりと扉の鍵へ目をやる。千治が身体でそこを塞いだ。藍より身長はないが、燐より充分大きい。よいしょ、と手で退けられるはずもない。

「……あたし、退学の手続きしに」
「燐、兄貴のこと信じてるか?」

質問の意図が見えない。
燐は千治を見上げる。

「藍の手は黒くないと断言出来るか?」

何の話だ。