燐とクラスメート女子の喧嘩は、同じ学年や他の階の生徒たちに知れ渡り、見世物となっていた。

「人の男盗っておいてよくそんなことが言える」
「つかあんたの彼氏って誰?」
「はあ!?」
「もしかしてこん中にいて、これ見てて、止めようともしてないの?」

燐はぐるりと教室内、それから扉から顔を覗かせる面々に視線をやった。

一瞬にして、しん、と静まる。標的が女子から他へと変わるかもしれないという緊張感。

「とんだクソ男だな」

は、と嘲笑った。燐は手を離し、女子の手を振り払う。
終わらせようとしている。それでは腹の虫がおさまらない、と女子が手を振り上げた。