千治は肩を竦めて笑う。

「んな睨むなよ。言ってねえから」
「なら良い……ですけど」
「お前さ、兄貴いねえ方が良いな」

燐は立ち上がりながら言葉の意味を考える。
鞄を、とその位置を見れば、ちょうど千治の足元にある。

分かっているのか、いないのか。

「何が」

藍がいない方が、とは。

千治は少し首を傾けながら答えた。

「……感じが?」

疑問形なのは何故だ。
燐はじりじりと千治に近付き、鞄を視界に入れた。

それから、へらと笑う。

「よく言われます」

本当は一度も無いが。

同時に屈もうとしたが、その前に腕を掴まれた。