「ぎ、ぎゃあああああ!!!」

叫び声が響き渡った。渡るほどこの部屋は大きくないが。

キッチンの方で物音がした。立ち上がってその場から逃げる。

ちょうど、コンロの火を消した藍がこちらを見ていた。表情を確認する前にその背中にひしとくっつく。

「おにーちゃん!!」
「おはよ」
「し、知らないひとがいた!」
「あ? ああ」

何でもないことのように返事をする。
知らないわけがない。昨夜、藍が連れてきた人間だからだ。

リビングの方で動く気配がして燐は静かに振り向く。

黒髪の男がゆっくりと起き上がった。