(せっかくこんなに素敵なドレスを用意してもらって、綺麗にしてもらったのにな)

 自分の不甲斐なさに、気持ちがどんどん落ち込むのを感じた。

 ミレイナはテラスから庭園の方向を眺める。ところどころに明かりが点され、広い庭園は闇夜に幻想的に浮かび上がって見えた。

「ミレイナ、探したぞ。こんな場所にいつまでもいると風邪を引くぞ」

 どれくらい経っただろう。
 声と一緒に肩に何かがかけられるような気配がして、ミレイナは驚いて振り返る。そこには、シャツ姿のジェラールがいた。

「ジェラール陛下?」

 よくよく見ると、自分の肩にかけられていたのはジェラールのフロックコートだった。

「申し訳ありません、私ったらこんなっ!」

 ミレイナは慌ててそのフロックコートを脱ごうとする。しかし、ジェラールに「いいから着ておけ」と制止されてしまった。

「すみません。ありがとうございます」