部屋を出て廊下を歩いていると、二客のティーカップとティーポットをトレーに載せてこちらに歩いてくるマリベルとすれ違った。
 ジェラールとラルフ用だろう。

「あんな下手なお茶しか淹れられないくせに、よく陛下とお茶ができるものね。いくら陛下がお優しいとはいえ、厚かましいにも程があるわ」

 すれ違いざまに確かにそう聞こえ、ミレイナはハッとする。

 立ち止まって振り返ると、マリベルはちょうどジェラールの部屋に入室しようとしているところだった。

(私、ジェラール陛下の優しさに甘えすぎなのかな?)

 ふわふわと高揚していた気持ちが急激に冷え込み、竜王陛下ともあろうお方に下手なお茶を飲ませてしまったことが、とても申し訳なく思えてくる。

 正論過ぎて、言い返すこともできない。

 ミレイナは肩を落とすと、とぼとぼと自分の部屋へと戻ったのだった。