アダムはミレイナの頭から足下まで視線を移動させると、僅かに眉を寄せた。

「もしかして、ここで不当に扱われているのかい?」

 アダムの声が一段低くなる。

「え?」

 ミレイナは自分の姿を見下ろす。

 魔獣の森を一時間以上散歩したせいで、メイド服の上に羽織っている赤茶色のケープには至る所に枯れ葉や木くずが付いていた。さらに、ところどころは土汚れもあった。
 ミレイナが汚れた格好をしていたので、アダムはミレイナが皆が嫌がるような汚れ仕事をさせられているのかと思ったようだ。

「ううん。全然! とってもよくしてもらっているわ」

 ミレイナは大きく首を振ってアダムの想像を否定する。ラングール国の人々は、得体の知れない外国人であるミレイナを温かく受け入れてくれた。

「私、自分で希望して魔獣係をしているの」
「魔獣係?」
「ええ、そうよ。魔獣の森で怪我をしたり、親とはぐれた子供の魔獣を保護してるの。私は魔獣達の言葉もわかるし、適任でしょう?」
「なるほど、それで」

 アダムは芝生を駆け回って遊ぶ魔獣達に視線を移し、納得したようだ。