獣人にはミレイナと同じウサギ獣人を始め、犬獣人、猫獣人、熊獣人、馬獣人など、様々な種類がある。

 しかし、ミレイナの祖国であるアリスタ国では皆が獣人であることを隠しながら暮らしていた。なぜなら、獣人は人間と動物の中間に位置する生き物としてながらく差別の対象だったからだ。

 そのため、実を言うと、ミレイナも自分以外の獣人にはほとんど出会ったことがなかった。

「そうだよ。僕はアダム=ファーバー。クレア王女の近衛騎士をしている」

 アダムと名乗った猫獣人の男性はにこりと微笑むと、片手を胸に当てて騎士の礼をする。

「クレア王女……。もしかして、アリスタ国の?」

 クレア王女と聞き、すぐにアリスタ国の第一王女が思い浮かんだ。
 以前、アリスタ国とラングール国の和平調印式がアリスタ国の王宮で開催された。それに招待されたときに、一度だけ遠目にその姿を見たことがある。

 流れ落ちる滝のように美しい金の髪に空を思わせるような青い瞳をした美しき王女だと噂では聞いていた。はっきりとは見えなかったが、遠目にも美少女だとわかるような美しい人だったと記憶している。