竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~


(もしかして、猫?)

 それは、紛れもなく黒猫だった。
 大きな金色の瞳でミレイナを見下ろしている。

 猫はここラングール国では見かけないが、ミレイナの故郷であるアリスタ国にはたくさんいた。
 それに前世でペットショップ店員をしていたミレイナは、仕事でもずっと世話をしてきたので、見間違えるはずもない。

(もしかして、来賓の方の連れてきたペットの猫が逃げて来ちゃったのかも)

だとすれば、この子の飼い主はきっととても心配しているはずだ。ミレイナはその塀の上の黒猫に向かい、両手を伸ばす。

[猫ちゃん、逃げたら駄目だよ。おいで]

 ちょうどフェンリルのおやつ用に持っていた干し肉を差し出す。すると、黒猫はそれの匂いを嗅ぐように鼻を寄せ、ストンと地面へと降り立った。

 そして、その瞬間──。