竜王陛下のもふもふお世話係2~陛下の寵愛はとどまるところを知りません~


[じゃあ、知らない匂いでも安心だね。ねえ、みんな。追いかけっこの続きをしましょうよ]
[いいよ!]

 エミーユのかけ声に合わせて魔獣達はあっという間に広場で走り回り始める。その様子を確認してから、ミレイナは改めて穴の向こうを覗いてみた。

(どんな人達が来ているのかしら?)

 もっとよく見たいけれど、飾りレンガの穴は小さくてよく見えない。
 目を凝らしていると、シュッと黒いものが視界を下から上に移動したように見えた。

[え?]

 一瞬のことに驚いたミレイナは、覗いていた飾りレンガから咄嗟に顔を離す。そして、塀の上に黒い生き物がいるのを見つけた。

(え? これって……)

耳はピンと尖り、全身を覆う短い毛並みは艶やかな黒。体つきはしなやかで、長い尻尾が上へと伸びている。