[見つけた。先に行っちゃ駄目でしょ!]

 ミレイナはそちらに歩み寄ると、頬を膨らませる。

[ごめん。知らない匂いがたくさんしたから、気になったんだ]

 シェットは振り向いて謝罪すると、また壁の向こう側を見つめる。ミレイナはその様子を見て不思議に思った。

[何を見ているの?]

ラトはミレイナの肩から素早く下りると、器用に塀を上まで登った。
 辺りを見回すと、塀のところどころに飾りレンガが嵌められているのが見えた。ミレイナは三匹のフェンリル達と同じように、その穴を覗く。

(あれは、馬車かしら?)

 塀の向こう側には、沢山の馬車が停まっているのが見えた。

 一番近くに停まっている黒塗りの馬車には全体的に蔦が絡まったような金色の飾りが施されており、一目見ただけで高貴な身分の人が乗るための馬車であるとわかった。