オーケストラの歓迎の曲が止まる。ダンスが始まるのだ。

「ミレイナ、踊ろう」

 すぐにジェラールがミレイナに声をかけ、手を差し出してきた。

「はい」

 ミレイナは笑顔を浮かべると、ジェラールの手に自分の手を重ねる。

「ミレイナはやはりあいつと話すとき、楽しそうだな」

 少しだけ不満そうなジェラールの口調に、ミレイナはジェラールを見上げた。

「アダムは友人ですよ」

 ミレイナは言う。

「私が好きなのは、ジェラール陛下だけです」

 ジェラールは大きく目を見開くと、きゅっと口を引き結ぶ。銀色の髪の合間から覗く耳がほんのり色づいているのが見えた。

(もしかして、照れているのかな?)

 毎日のように愛を囁いてくれるジェラールに対し、ミレイナからジェラールに「好きだ」と伝えることはあまりない。
 いつもミレイナに対して余裕を持った態度なのに、思わぬ可愛らしいところを発見して笑みが漏れる。