ジェラールが助けてくれなかったら、ミレイナはただのウサギとしてあそこに閉じ込められていた。薬が切れた後はラングール国では非常に珍しい獣人としてそれこそどこかの見世物小屋に売られていたかもしれないのだ。
 それに、何の非もない魔獣達をあんなふうに罠で捕らえて劣悪な環境に置くなんて、許せない。

 怒りでぷるぷると震えるミレイナの背中をジェラールの手が優しく撫でる。お腹の下に手を入れられて、ジェラールの目線まで持ち上げられた。

「大丈夫だ。ミレイナのことは俺が守る。それに、今回の件は絶対に許しはしないし、二度と同じことは起こさせない」

 青い瞳に見つめられ、幾分か気持ちの昂ぶりが落ち着くのを感じた。
 ジェラールはミレイナの鼻先に唇を寄せ、キスをする。

「ミレイナ、俺を信じろ」

 そう言われただけで、何もかもが上手くいくような気すらした。

[……うん]

 ジェラールはまるでミレイナの言葉が通じたかのように微笑むと、またその小さな体を胸に大切に抱く。
 それを向かいのソファーに座りながら眺めていたラルフとウォルトが「ウサギ姿のときもやっぱりいちゃいちゃしているんだな」と思っていたことなど、知るよしもない。