◆◆    5

 その日の午後、ミレイナはいつもの時間にジェラールのところに向かった。

 ジェラールは穏やかな笑みを浮かべてミレイナを部屋に迎え入れる。
 毎回座るジェラールの向かいに座ろうとすると、「待て」とジェラールに止められた。

「ミレイナ、違う。ここだ」

 ジェラールはぽんぽんと自分の隣の座面を叩く。
 ミレイナは少し迷ったものの、言われた通りジェラールと同じロングソファーに座った。

「ミレイナ、なぜそこに座る?」

 ジェラールに怪訝な顔で問われ、ミレイナはびくっと肩を揺らす。
 ミレイナが座っているのはソファーの一番端、ジェラールが腰を下ろしている場所からだとおよそ一メートル離れている。

(だって、恥ずかしいんだもん)

 今朝はあれほど素直にジェラールに好きだと伝えられたのに、数時間経つと気恥ずかしさが勝ってまともに顔を見ることもできない。
 もじもじとしているミレイナを見かねたのか、ジェラールのほうが立ち上がってミレイナの隣に腰を下ろす。そして、ミレイナの顔を覗き込んできた。

「ミレイナ、どうした?」
「え?」

 ミレイナはパッと視線をジェラールに向ける。