「ミレイナが自分から飲むとは考えられない」
「それには私も同感です。知らない間に飲まされたのではないでしょうか?」

 ジェラールは怒りが込み上げるのを感じた。
 誰が何の目的でミレイナにそんなものを飲ませたのか。
 ただ、ミレイナを快く思わない人間が近くにいる。それだけは確かだ。

「絶対に捕らえて、然るべき処分を下す」

 ジェラールの怒気を孕んだ声に、部屋の隅で横になっていたゴーランが心配そうに顔を上げた。

「まずは、ミレイナの安全を確保する必要があるな」

 いつどこで、またおかしなことをされるかわからない。今回は薬だったが、次は違うもので狙われるとも限らない。

「密かに護衛を付けたほうがいいかと」
「ああ。ただ、犯人がわからない以上くれぐれも内密にしてくれ」
「心得ております」

 ラルフがしっかりと頷く。

(くそっ! 絶対に捕らえてやる)

 ジェラールは今後のことを考え、どのようにことを進めるべきかと深い思考に沈み込んだ。