改めて見ても、どれもとても美味しそうだ。
 何を食べようかと散々迷い、結局全種類をひとつずつ取った。

「美味しいー」

 一口食べれば、ケーキの味わいに混じり、人参の甘みがほのかに広がった。
 ぽっぺたが落ちそうなほどの美味しさ。
 さすがは竜王陛下の専属料理人が腕を振るっているだけのことはある。

(あ、いけない。礼儀作法!)

 恍惚の表情を浮かべて夢中で食べていたミレイナはつと我に返る。
 礼儀作法の先生によると、淑女というのは美味しくても大口を開けず、小さな口で少しずつ食べるものらしい。

 それを聞いたとき、ミレイナは淑女には一生ならなくていいなと思った。口には出さないけれど。

「どうした? 口に合わなかったか?」