リンダによると、昨晩はミレイナが帰ってこないと寮中が大騒ぎになったらしい。メイド仲間達が寮内をくまなく捜し、メイド長にも連絡したという。ジェラールの部下も何回も事情を聞きに来たらしい。

(そっか。私が行方不明になったから皆心配してくれて──)

「心配かけて、ごめんね。ちょっと色々あって」

 ミレイナはしゅんとして謝罪する。

「ううん。戻ってきてくれてよかったよ」

 リンダは人差し指で涙を拭うと、にこりと笑う。

(私、こんな風に心配してくれる友達がいて幸せ者だな)

 ミレイナはリンダの存在に、心から感謝する。

「ところでリンダ。随分と早いのね?」

 リンダはいつものように、黒いワンピースのメイド服を着ていた。
 まだ、早朝といってもいいような時間なのに、こんな時間から仕事なのだろうか。