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 ラルフの登場で一気に冷静になったミレイナは、一旦自分の部屋に戻ることにした。

(あー、恥ずかしかった)

 穴があったら入りたいとは、このことである。
 ウサギ姿だったら、本当に穴を掘って隠れていたと思う。

 まだ朝早く、住み込みの宿舎の廊下は静まりかえっていた。ミレイナは歩きながら、未だに羞恥から紅潮している頬を冷ますように手で仰ぐ。

「あれ、ミレイナ!」

 その静寂を破るような呼び声に、ミレイナはびくっとして足を止めた。
 声のほうを向こうと振り返ろうとした瞬間、勢いよく抱きつかれた。

「ミレイナ! よかったー! 心配したんだよ!」
「え、リンダ?」

 目に入ったのは、一纏めにした赤茶色の髪の毛だ。
 ミレイナに抱きついてきたのは、リンダだった。リンダはミレイナをしっかりと抱きしめ、少し体を離すとこちらを見つめる。その目には、薄らと涙が浮かんでいた。

「どこに行っていたの? 皆ですごく捜したんだよ」
「あ、ごめん……」