背中に手を回し、ふたりの顔が再び近付いたそのとき──。

「ジェラール陛下! 元に戻す方法がわかりました!」

 バシーンと勢いよく寝室のドアが開け放たれ、聞き覚えのある声がした。

(え?)

 ミレイナはハッと我に返り、ドアの方向を見る。
 天蓋から垂れ下がった薄衣越しにも、そこに立つラルフとバッチリと目が合ったのがわかった。

 ラルフはジェラールに組み敷かれる人間に戻ったミレイナの姿を見て目を見開いたが、大体の状況を即座に察したようだ。

「失礼いたしました。どうぞ私にはお構いなく、続きを──」

 開けられていたドアがパタンと閉まり、ラルフが見えなくなる。

「…………」

 部屋の中になんとも言えない空気が流れた。
 その空気を破ったのは、ミレイナだ。

「い、いやーー!」

(こんなところを見られるなんて、恥ずかしすぎる!)

 早朝のラングール国の王宮に、ミレイナの悲鳴が響き渡ったのだった。