翌日いつものように魔獣舎に行くと、早速ミレイナの耳飾りに気付いたのはエミーユだった。

[あ。ミレイナ、リボンしてる]
[これ? ジェラール陛下にいただいたの]
[ふうん。可愛い]

 エミーユはゆらゆらと尻尾を振りながら、ミレイナを見上げる。

[エミーユも可愛いわよ。リボンがお揃いね]
[本当? えへへ。昨日、マルクも褒めてくれたの]

 エミーユは首元を見せるように顎を上げる。
 マルクというのはエミーユの相棒をしている竜人で、眦が下がった優しそうな男性だ。けれど、ジェラールによると魔法と剣の腕はジェラールの側近の中でも有数なのだという。

[よかったわね]
[うん!]

 エミーユは満足げに頷くと、再び遊び場へと駆けてゆく。ミレイナはその後ろ姿を見送ってから、食事を準備するための調理場に向かった。

 水の入った盥を覗くと、耳に水色のリボンを付けた自分の姿が水面に映っている。

「あ、ちょっとずれてる?」

 ミレイナはクリップを挟み直すと、もう一度盥を覗き込む。

「えへ、かわいい」

 ジェラールにもらった水色のカメオのネックレスに、水色のリボン。宝物がまたひとつ増え、気持ちが華やぐのを感じた。