(やっぱり今日は様子がおかしいかも)

 ミレイナは抵抗するのを止めると、逆にジェラールの背中に手を回した。なんとなく、そうしてあげたほうがいい気がしたのだ。

「やはり俺にはお前しかいない」
「え?」

 ミレイナの首筋に顔を埋めたまま、ジェラールが小さな声で呟くのが聞こえた。

(何がお前しかいないのかしら?)

 気にはなったものの、今は聞かないほうがいい気がしてミレイナは口を噤む。
 代わりに、ジェラールを安心させるかのように広い背中を撫でてあげた。