「あっ」


 ホームに視線を向けると、階段の下で若いOLさんが転んでいる。しかし、ラッシュのこの時間帯、みんな自分しか見えていなくて、誰も助け起こそうとしない。

 だ、大丈夫だよね。きっと、誰かが助けてくれるよね。うん、きっと平気、きっと……。

 再び駅員のアナウンスが電車のドアが閉まってしまう。けど────。



「だ、大丈夫ですか?」



 ───降りてしまった。

 声を掛けると、OLさんは鼻血を流しながら顔を上げた。



「あ、ありがとうございます…」
「立てますか?ティッシュ使ってください」



 やがて誰かが呼んだ駅員さんが来て、OLさんは何度も頭を下げ、その場を後にした。

 駅員さん、来た。私が降りなくても、誰か助けてくれたんだよやっぱり。すると、視線を感じる。