「どうしたの?気分でも悪い?」
「いえ、頭ぶつけちゃって……」
「うわー、痛かったでしょ!保健室行く?送ろうか?」


 美人で性格もいいの……?!この前は保健室で嘘ついてごめんなさい!

 もう驚きで言葉も出ない。なんでこんなに美人で優しい幼馴染がいるのに、こっちを選ばないの?しかも水瀬くんの好きなポニーテールじゃん!

 心配してくれてありがたいけど、保健室に行くほどの痛みじゃない。私が断ろうとしたその時、水瀬くんの声が響く。



「俺が連れてく」
「え?奏多は気を遣えないんだからダメだよ」
「いいから、愛理は心配しなくていい」
「ちょっと、奏多!」
「水瀬くん?!」



 突然腕を掴まれ、水瀬くんに引っ張られるように廊下を歩き出す。

 愛理先輩は驚いたように水瀬くんを見つめていた。そして、私と視線が合うとその目を伏せる。せっかくの気持ちを無駄にしてしまった……!

 しばらく歩き、水瀬くんはピタリと足を止めた。そしてこちらを無表情で振り返る。



「ごめん。頭痛いのに」
「ううん、平気だよ。それに保健室も行かなくて大丈夫」
「そっか」
「……せっかく先輩が心配してくれてたのに」
「愛理はお節介すぎる」
「え?」
「二人で話してるのに、邪魔されたくなかった」


 唇を突き出し、拗ねた子供のような表情をする水瀬くん。いや、女子相手に拗ねられても困っちゃうよ……!