────バコン!!

 水瀬くんの顔が良すぎて、なんとか逃れようと後退り、頭が下駄箱に思い切りぶつかった。

 いやぁ、本当に水瀬くんの押しは強すぎだと思う。気を抜いたら心臓撃ち抜かれて死んじゃうよ……!

 あまりの痛みに蹲る私に、水瀬くんは慌てて駆け寄った。



「ちょ、おい、どうした?」
「……だ、大丈夫っ」
「大丈夫じゃなさそう」
「いたた……たんこぶできた」



 痛む後頭部をさすりながら立ち上がる。すると、水瀬くんが話すよりも先に、横から女子の明るい声がした。



「奏多!おはようっ……あれ?この前の」



 二年生の下駄箱からこちらに駆け寄ってきたのは、水瀬くんの幼馴染の美人先輩……愛理先輩だ。

 愛理先輩は、艶のある黒髪をポニーテールにしていて、小さな顔が際立ってモデルさんみたいだ。

 後頭部を抑える私を見て、心配そうに口を開く。