────プルルルル
『一番線に、電車が参ります』
あの最悪な日々から数年、季節は春と夏の合間、5月半ばだ。
駅員のアナウンスが耳に入り、私は芸能人のSNSを見ていたスマホを制服のポケットにしまい、視線を上げる。朝の通勤通学ラッシュの駅構内、混雑したホーム。今日も今日とて、恐ろしいほど混んでいる。
だから私は、定員オーバーで乗りはぐっても良いように、早めの電車に乗って通学していた。
ホームにぬるい風と共に、電車が滑り込んできて、私はドアのすぐ横の定位置に立った。そして、スマホを鞄から取り出し視線を落とす。しかし、その視線の隅で何かが動き、大きな音を立てる。