────有菜ちゃんや、友達からの誘いを断り、失恋の痛みに耐えるだけの長い夏休みが終わった。

 あれから奏多くんからの連絡は途切れた。

 自分が望んだこととはいえ、スマホを見ると連絡がきていないか期待をしてしまう自分がいた。

 胸の痛みは一向に消えないし、気を抜くと涙が溢れてしまう時もあった。

 失恋がこんなにも辛いなら、もう私は一生恋をしなくていいとさえ思う。

 たくさんの生徒でごった返す朝の下駄箱で、上履きを履き、人気の少ない静かな階段から重い足取りで教室へ向かっていると、後ろから肩を叩かれた。

 振り返ると陸くんで、わざわざ人気のない階段を選んだ私を追ってきたんだと思う。



「おはよう。お前後ろ姿から元気ねぇな」
「おはよう陸くん。そんなことないよ」
「……あれから何かあったか?」
「え」
「水瀬と」



 ────そうだった。

 あの花火大会以降、私は陸くんからチャットがきて、奏多くんとのことを聞かれても曖昧に答えていた。

 私はその場に立ち止まり、陸くんの腕を引っ張って廊下の隅に移動した。