きっと俺は、このまま平坦に冷めたまま生きていくんだろう。そう思ってた。
 
 というか、他人に妙に共感したり、分かち合ったり努力したり、それって必要なのか?俺にはよく分からない。しようと思っても、きっとできない。

 母さんの腹の中に感情を落としてきたのかもしれない。よく愛理が俺を見てそんなことを言っていた。



 ────だからあの日。




「だ、大丈夫ですか?」


 
 凛子が電車から飛び出してきたあの日、何故か目が離せない自分に驚いた。

 真面目なタイプで、男子から声を掛けられるとオドオドして顔を赤くする。いつも女友達と一緒にいるように、少し内気なタイプの女子。

 なのに、助けることを戸惑うくらいの注目を集め、倒れている人間になりふり構わず、なんなら電車を降りてまで駆け寄るあの姿に釘付けになった。



「(すげー、勇気あるじゃん)」



興味が湧いた。自分の想像を軽々と越えた凛子に。

 初めて、誰かのことをもっと知りたいと思った。その勇気に触れてみたい、近くにいきたいと思った。

 多分、いや絶対に。俺はあの時あの瞬間、凛子にハマっていた。