「私は大丈夫、陸くんは友達と行って」
「なんでだよ。確かに俺はお前が行きたかった相手じゃねーけど……」
「違う!そういうことじゃなくてっ」
「じゃあいいだろ。夏の醍醐味なんだから、気楽に楽しみに行こうぜ。俺金魚掬いすげー得意なんだよ」

 

 陸くんがあまりにも楽しそうに言うから、思わず気が抜ける。

 今回、奏多くんと一緒に行けなかったけど……確かに夏の醍醐味だもん。花火も見たいし。

 私は恐る恐る陸くんに声を掛ける。



「……本当に、迷惑じゃない?」
「は?迷惑なのに誘ってたら頭おかしいだろ」
「頭おかしいって」
「気にしいだなー。とにかく約束な。ID交換しよ」
「うん。詳しいことは後で決めよう」



 お互いのスマホでIDを交換しながら、私は大分気持ちが楽になったことに気づく。

 きっと一人だったら、2人のことを考え過ぎて落ち込んでいただろうけど。こうやってなんでもないように肯定してもらえたことで、とても救われた。

 私がお礼を言おうと口を開くと、突然何かを思い出したかのように陸くんが立ち上がる。



「やべー!俺約束あるんだった……またな凛子!連絡する!」
「あっ、そうなんだっ……またね!」



 片手を上げて駅の方角に走っていく陸くんの背中を見て、お礼を言い忘れたことに気付く。

 ……けど、また今度会った時でいいか。私はゆっくりとベンチから立ち上がった。





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