「俺らも図書室行く」
「え?!!お前数学教えてくれんの?!」
「凛子が一緒なら」
「片山さぁぁぁん、頼む!お願い!」
「高田キモ……」
「いや有菜!お前も泣きついてただろ引くなよ!」
「あはは……私は全然いいよ」



 高田くんにここまで必死に頭を下げられて、断ることなんてできない。というか、普通に奏多くんも見てあげればいいのに。

 その気持ちを込めて奏多くんに視線を向けると、私の鞄をヒョイッと持って、さっさとドアに向かって歩いて行ってしまっていた。言い合う二人を置いて慌てて追いかけると、奏多くんは満足げに口角を上げる。



「凛子と勉強とか、はかどりすぎてクラス順位一位取れそう」
「な、なにそれっ……それはどう考えても無理でしょ」
「えー……じゃあ、万が一取れたらご褒美もらう」
「え?」
「俺が一位だったら、凛子からのハグね」
「っ、ちょ、待っ」



 どんどん話が進んでいき、謎のご褒美まで決まってしまった。しかもハグとか、ハグとか……!!

 奏多くんを好きだと自覚してしまった手前、いや……例えそうじゃなくても、そんなことをしたら死んでしまう。

 ボンッと赤くなった私の顔を覗き込み、奏多くんは大きな目を細め、悪戯に微笑む。