「えー、あと一週間で期末だ。赤点取ったら夏休み補習三昧だからな。ちゃんと予習しとけよ」


 放課後のホームルーム。担任の言葉でクラスの温度とテンションが一気に下がる。

 ところどころから、小さな悲鳴が上がっているのを確認しながら、私も今回数学の範囲が苦手なところと被っているのを思い出す。



「(期末までは寄り道せずに帰って予習しなきゃかな……)」



 ホームルームが終わり立ち上がると、突然誰かに腕にしがみつかれ肩が跳ねる。

 しがみつかれた腕を見ると、半泣きの有菜ちゃんがそこにいた。視界の隅では高田くんも奏多くんに泣きついている。

 そういえば、さっき悲鳴を上げていた中に二人がいたなぁ……。



「助けて凛子。英語絶対赤点取っちゃう……」
「ええ、本当に?そんなに分からないの?」
「無理無理、お願い。私夏休みなくなるの嫌だ……!!凛子成績良いんだからわたしを救ってお願い……!!」
「……じゃあ、期末まで一緒に勉強する?図書室とかで」
「する!ありがとう凛子ぉ〜」
「あはは、いいよ」



 ぎゅっと抱きしめられ、私も抱きしめ返す。有菜ちゃんはいつも助けてくれるから、ピンチの時には私も助けたいし。勉強する場所が変わっても多分問題はないでしょ。

 すると突然、私の机に鞄がドサっと置かれ固まる。

 視線の先には無表情の奏多くんと、半泣きの高田くんが立っていた。