……加倉井さんとスマホでやりとりしてしまった。

 汐音は無事に日坂の連絡先を訊き出し、輝美のスマホに転送したあとで、ホッと息をついた。

 目の前で話してるわけじゃないのに緊張しちゃうな、と赤くなったとき、誰かが近くに立っているのに気がついた。

 背の高い男が笑ってこちらを見ている。

「なに? 彼氏?」
と人気のない渡り廊下で言ってきたのは、父母翔《ふも かける》だった。

 いきなり居たので、思わず、
「あっ、もふもふさんっ」
と言ってしまう。

「翔でいいよ。
 いや、もふもふでもいいけど」
と翔は笑って言ってきた。

「もうさー、輝美ちゃんがさー。
 僕を派遣社員ハンターみたいに言ってて、参っちゃうんだよね~」

「はは……大変ですね~」

 などと世間話をしていた汐音は向こうの棟から、こちらを見ている人物が居るのに気がついた。

 渡真利(とまり)だった。