……だ、大失態のようです、と汐音は固まりながら、振り返っていた。
背後には案の定、父母の前の彼女が立っていた。
彼女は腕を組み、顎を突き上げるようにして自分より大きな汐音を見下すように見ようとする。
「あなた、婦警さんよね?
なんで翔さんと居たのかしら?」
緊迫した空気の中、汐音は彼女を見つめ返しながら思っていた。
……翔さんって誰だっけな?
「父母だっ、莫迦者っ。
人のフルネームと顔は覚えろっ。
相手が容疑者かどうか以前に、人としてっ」
と渡真利が居たら、怒鳴っていたことだろう。
いや、汐音も別に覚えてないわけではなかったのだが。
『もふもふさん』のインパクトが強くて、下の名前の印象が薄かったのだ。
汐音の中では、名字が父母で、名前が、もふもふ、くらいの感じだった。



