狙われてますっ!

 いつものように和やかに、兄妹っぽく会話をしているうちに、汐音に浮いた噂がない話になる。

 いや、こいつ、今、めちゃめちゃ浮いてる(?)が……と思いながらも、利子の、汐音がいろいろ男友だちを連れてきても、誰とも怪しくない話を聞いていた。

「ほんと、繁ちゃんと結婚するのかと思ってたわ~」
と笑う利子に、繁は、ははは、と笑って言った。

「いや、なんでですか」

「あら、だって、繁ちゃん、昔から汐音が好きだったでしょう?」

 ゴトッとボウルを落とした繁に、利子は笑って言う。

「物好きねえ、と思ってたのよ。
 繁ちゃん、モテるのに」

 そこへ手伝いもせず、ただ飲み物を取りに来た汐音の弟、(りん)が口を挟んでくる。

「あれ? 繁(にい)、自分で知らなかったの?
 俺でも知ってたのになー」
とどうでもよさそうに言って、牛乳を手に行ってしまった。

 なんということだっ。
 繁も汐音を好きだったとはっ。

 これでは何処にも逃げ場がないではないかっ、と繁と繁の中の渡真利は衝撃を受ける。