狙われてますっ!

 ともかく、このままでは仕事にまで支障をきたす。

 今も怪しい奴より、加倉井の方を見張ってしまいそうだ……、
と渡真利は目の前を歩くターゲットのひとりを見、斜め後ろにある求の会社の入っているビルを見る。

 早く仕事を終わらせて、『渡真利』と汐音の接触を減らすか。

 いや……、まだ犯人を追い詰めるほどの証拠が(そろ)っていない。

 では、渡真利と汐音の接触をできるだけ少なくして、繁の方を多くするか、と渡真利は算段する。

 このままでは、渡真利の感情に繁まで流されてしまいそうだったからだ。

 繁は家で無防備な汐音と接触することも多いから危険だっ、と渡真利は不安に思っていた。

 渡真利の中に現れた汐音に対する感情は、突然、宇宙から飛来したアメーバのようなもので。

 うねうねしたなんだかわからないものに骨の(ずい)まで侵蝕(しんしょく)されていきそうで怖い、と思っていた。

 ともかく、繁の方での接触を増やすことにする。

 週末、汐音の実家に一緒に行き、ふたりで利子(としこ)の料理を手伝ったりした。

 汐音は手伝うというより、邪魔している感じではあったが。