「黒い髪ゴムと虫の区別がつかない話も、ちょっとあれだけど。
 でも、恋をすると、情緒不安定になって、よくわからないメールとか送っちゃうわよね」

「真琴さんでも、そんなことあるんですか?」

 渡真利を攻略しようとする姿も輝美と比べて、淡々としているし、常に冷静なのかと思ってた、と思い、汐音が訊くと、真琴は赤くなり、

「……たまにはあるわよ、そういうことも。
 昔の話よ」
と言ってくる。

 なんか可愛いな……と思い、つい、突っ込んで訊いてみる。

 すると、学生時代、気になる人が居たのだという話になった。

「柔道がすごく強くて。
 全然イケメンとかじゃなくて、タイプじゃないなあって思ってたんだけど。

 呑み会の帰り、私が側溝の蓋でつまづきかけたら、さっと腕つかんで助けてくれたの。

 大丈夫ですかって。
 そのときのやさしさとか、支えてくれたガッシリした腕の感じとか。

 なんかいいなってちょっと思っちゃったんだけど。
 照れてしまって、うまくお礼のメールもお誘いのメールも送れなくて。

 何度か呑み会で一緒になったけど、なにも発展しなかったわ」

 ちょっと頬を赤らめて恥ずかしそうに言う真琴が新鮮で、思わず、聞き入ってしまう。