狙われてますっ!

 黙って汐音を見つめていた求が、着だるまになって、もこもこな汐音の肩に触れ、そっと唇を重ねてくる。

 え……

 えーと……? と汐音が思ったとき、求が離れた。

 求は自分でも戸惑っているような顔をしている。

 いや、あなたが困らないでくださいよ。
 私も困っています……と汐音が思ったとき、求のスマホが鳴り出した。

 求が電話に出ると、陽気な武志の声が聞こえてくる。

「お前ら、何処まで上がってんだ?
 みんなでなにか食べに行かないか?」

「あ、ああ……、わかった」
と言って、求は電話を切った。

「よ、よしっ。
 急ぐかっ」
と言われ、汐音は、は、はいっ、と慌てて車に乗り込む。

 求は山を下りる間、ずっと沈黙していた。

 ……なんでしょう?
 笑った弾みで、うっかりしちゃって、後悔してるとか?

 いや、笑った弾みでキスするとかどうなんだ、と汐音が思ったとき、

「さっき」
と求が口を開いた。

 はっ、はいっ、と汐音はビクつく。