狙われてますっ!

 しん……となった夜の山。

 ふたりは黙って、真っ暗な空を見上げていた。

「……もしかして、今ので終わりでした?」

「どうりでデカイ花火だと思ったんだよ。
 最後の一発だったんだな……」

 下を見ると、光の列があちこちの道路を埋め尽くしているのが見えた。

 渋滞になる前に、と急いで帰路に着いた車で既に大渋滞のようだった。

 ふたりで顔を見合わせ、沈黙する。

 だが、同時に吹き出していた。

「おかしいと思ったんですよ、今の花火っ。
 大きすぎるからっ」

「莫迦じゃないのか、俺たち。
 ずっと音だけ聞いてたな、花火のっ」

「いやいや、木の隙間からちょっとだけ見えましたよっ」

 これから見えるであろう花火を楽しみに、木々の向こうに微かに透けて見えるカラフルな光を見てワクワクしていたのを思い出し、汐音は爆笑してしまう。

 だが、一緒に笑っていたはずの求が、途中から笑っていなかったことに気がついた。