狙われてますっ!

「え? 城なんて買いましたっけ?」
と顔を上げ、汐音は訊き返してきた。

 いや、おそらく買ってはいない。

 っていうか、どうやって買う気だ、と求が思ったとき、汐音が、ああ、と笑って頷いた。

「ドラッグストアに行ったときのメモですね。
 実は私にもわからないんですけど」

 わからないって。
 お前の書いたメモだろう……?

「塩かな~と思って、買いました」
と言って、ははは、と汐音は笑う。

 いや……、自分が欲しいものをメモしたんだろうに。

 お前は自分が欲しいものもわからないのか、大丈夫か。

 そんなんだと、誰かを好きになって、日記とかにメモ書きしても。
 書き間違えたら、その男が誰なのかわからなくなってしまうんじゃないのか?

 いや、似た名前の違う男が居たら、そっちだったかなと、そいつと恋に落ちてしまうんじゃないのかっ?

 俺の名前に書き間違うのなら、もちろん大歓迎なんだがっ、と思う求に汐音は言ってきた。

「変換ミスしても、そのときは、まあこれでわかるだろうなって思うんですけど。
 時間経つとわからなくなってるんですよね~」

 笑う汐音に、求はさらに不安になる。

 汐音、スケジュール帳に俺との約束書くときは、ちゃんと書けよ……。

 でもまあ、これでミステリアスな汐音の謎のひとつが解けたな、と求が安堵したとき、汐音が何処か遠くを見て、ぼそりと呟いた。

「ナゾの七味和えってなんですかね~」