狙われてますっ!




 カウンター席か。
 さっきから、横並びでずっと寿司だけ見つめてる感じなんだが……、
と思いながら、求はまだ寿司を眺めていた。

 まあ、自分が横を向けばいいだけの話なのだが。
 結構椅子が近くて、ちょっと動くと、汐音の肩が触れそうで緊張する。

 ……そうだな。
 汐音の顔は見られないが、こうやって二人肩寄せ合い座っているのって、ちょっと恋人同士か夫婦っぽいからいいか、と求はご機嫌になる。

「加倉井さん、なにか頼みます?」
と訊いてくる汐音もウキウキしているように見えるが。

 いや……、こいつは寿司にウキウキしてるだけかな、と求は思った。

 汐音はおごるつもりのようだが、実は此処の株主優待券を持っている。

 ほとんどこれで払えるだろうから、汐音には端数だけおごってもらおう。

 そう思ったとき、夢の中、有川の声で流れた館内放送を思い出していた。

『汐音様は求様のよい奥様になると思います』

 良い奥様、か。

 俺はこいつと結婚したいのだろうか。

 確かに、とてつもなく惹かれている。

 だが、それはもしかしたら、こいつの、謎が多く、ミステリアスな部分に惹かれているだけなのかもしれない、と求は心配していた。

 この時点で、輝美、真琴、渡真利辺りが聞いていたら、

「え? ミステリアス?」
と問い返していただろうが。

 この、恋におぼれて、あばたもえくぼな男に突っ込んでくれるものは今、居なかった。