「汐音、渡真利さんと渡り廊下で揉めてたって、ほんと?」
給湯室で出会った真琴にいきなりそう言われ、
……しまった、騒ぎすぎてしまったようだ、と汐音は反省する。
目立たず騒がずがスパイの鉄則なのにっ、と、
「待て。
誰がスパイだ」
と渡真利が言ってきそうなことを思う。
「え、えーとですね。
……その、ちょっと渡真利さんの結婚観など伺ってたんですよ」
「なんでそんなもの訊いてるのよ」
と真琴に胡散臭げに問われ、
「……み、皆様にお知らせしようかと」
と汐音は言った。
すると、うむ、良い心がけじゃ、と言い出しそうな態度で真琴は頷き、訊いてくる。



