恋愛ゲームなら、確かにそこでお姫様抱っこだろうなと汐音が渡り廊下を歩いていると、また前から渡真利(とまり)がやってきた。 ちょっと困った顔をしている。 「お疲れ様です~」 と挨拶をすると、渡真利は足を止め、 「……お疲れ様です」 と覇気のない声で言ってきた。 「どうしたんですか?」 と汐音が問うと、 「いや、お前を好きなフリをしようと言ったが、なにをどうしたら、好きなフリになるのかわからない……」 と言ってくる。 「いやもう、やめたらどうですか? その無理な設定」 と汐音は言った。