車の中で、 「この寒いのに、こんなとこ来て楽しかったですか?」 と有川が求に訊いていた。 給仕をしてくれていたときより、フランクな口調だ。 もともと仲がいいのかもしれないなと汐音は思う。 今、迎えに来てくれたのも、半分仕事で、半分は友人としてなのかもしれない。 「楽しかったぞ。 久しぶりに走った」 と求は言って、 「なにやってんですか」 と言われていた。 汐音はミラー越しにチラと有川の様子を窺おうとしたが、デジタルインナーミラーだったので、見えなかった。