「あったかいココアでもおごってやろう」
木造遊具の側にある自動販売機のところで、求がそう言ってきた。
汐音はまだ、ぜいぜい言いながら、
「……いや、冷たいスポーツ飲料が飲みたいです」
と言って、笑われる。
「き、今日は私がおごる日なので、私がおごりますよ」
と汐音はよろめきながらも財布を出そうとしたが、求は、
「今回はお前と出かけられると思って、おごってもらったが。
女におごられるのは好きじゃないんだ」
そう言い、ジュースも買ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
と素直におごられることにして、受け取ろうと手を差し出したが。
求は手には載せずに、汐音の頬にその冷たいボトルを当ててきた。
「頬、真っ赤だぞ」
と言って笑う。
寒さと内側からの暑さで赤くなっているようだったが。
……そういうことされると、違う理由により、赤くなってしまうではないですか、と汐音は照れる。
ボトルでひんやりとした頬に手をやると、求はようやく汐音にそれを渡してきた。



