「むち君、どうしたの?」
スマホに電話が来ることはあった。
でも窓を開けて会話するのは、初めてだよね。
「別に。望愛の高校生活はどう?って、アメが心配してたから」
それでベランダに出て、シャトルを投げて、私の様子を聞きに来てくれたんだ。
むち君とおしゃべりするなんて久々だ。
懐かしさで心が浮わついてしまう。
「美奈ちゃんと華ちゃんっていうお友達ができたの。お昼も3人で食べてるよ」
「ふ~ん」
「うさラビー好きって話したら、今度アニメを見てみたいって。我が家に遊びに来ることになって」
「良かったじゃん」
えっ?
「オマエの好きなもの、わかろうとしてくれる友達ができて」
あれ?
むち君って、こんなに優しい表情をする人だっけ?
冷たさを含んだ夜風が、むち君のサラサラ髪を優しく揺らしている。
むち君の瞳も、別人みたいに優しく揺らいでいる。



