お姉さま方は、私から視線をそらすと
今度はアメ王子を見つめだした。
「雨宮君、聞いて、聞いて。
春休み中にダイエット頑張って、
5キロ痩せたんだよ~」
「美波ちゃんは、痩せなくても可愛いのに。
でも、よく頑張ったね」
「私のも聞いて。
ピアノのコンクールで、優勝したんだ。
すごいでしょ?」
「沙月ちゃん、どれだけ頑張り屋さんなの?
僕、楽器は苦手だから尊敬しちゃうよ」
ここって、姫君たちの求婚の場?
「私も私も」と、お姉さまたちは
頑張ったアピールをしているけれど
そのたびに雨ちゃんは、女子の頭をナデナデ。
「すごいね」「えらいね」「かわいいなぁ」
ほめ殺しのオンパレード。
緩みっぱなしの雨ちゃんの笑顔を見て、
がっかりしちゃった。
『雨ちゃんが優しいのは、
私だけじゃなかったんだ』って。
雨ちゃんのことは、諦めたはずなのに。
恋なんてしないって、誓ったはずなのに。
じりじりと心が痛みだす。
雨ちゃんが私を甘やかしてくれるのは
やっぱり、
亡くなった親友の、妹だからなんだね。