ややぽちゃ姫と3人の王子様



「今日だけでいいから、ねっ」


 今度は顔の前で両手を合わせ、上目遣いでちらり。

 なぜか鬼コーチの態度がおかしい。

 いつも纏っている攻撃オーラが、薄らいでいるような。



「あの……むち君……?」


「……」


「体調でも悪い?」


「そっ、そんなんじゃない!」


「寝不足?」


「いいから俺に構うな!」


 私の背中が反射的に後ろに反るほど、荒々しく怒鳴られたから

「ごめんね……」

 とっさに謝っちゃった。



「あ~、マジでムリ!」


「えっ?」


「俺に、どうしろって言うんだよ?」



 独り言?

 むち君は地面にしゃがみ込み、頭を抱えている。

 漆黒のサラサラヘアを、かきむしったかと思うと


「ほんとにほんとに、俺のせいじゃないからな!」


 これまた独り言っぽい遠吠えをひとつ。

 スッと立ち上がったむち君は、私の前へ。

 私の頭の後ろを包むように、大きな手の平を押し当ててきた。



 この状況は……一体?